鹿児島県の産業の歴史は、地理的特徴や自然環境、歴史的背景に大きく影響されています。
1. 農業
鹿児島は温暖な気候と火山灰土壌を活かした農業が古くから発展してきました。
• サツマイモ
サツマイモ(薩摩芋)は、江戸時代に琉球から伝えられたとされています。特に薩摩藩(現在の鹿児島県)がその普及を推進し、全国的に広まるきっかけとなりました。飢饉対策作物として重要でした。
• 茶業(知覧茶)
知覧を中心に茶の栽培が盛んです。江戸時代に始まり、近年では高品質な日本茶として国内外で評価されています。
• 畜産業(黒豚・黒牛)
黒豚や黒毛和牛の飼育は鹿児島の特産品です。特に黒豚は薩摩藩時代からの伝統があり、「肉を食べる文化」の一環として発展しました。
2. 水産業
鹿児島県は長い海岸線を持ち、漁業が盛んです。
• 鰹節
鰹節は江戸時代から生産が盛んで、鹿児島県は日本有数の生産地です。枕崎はその中心地として知られています。
• 養殖業
鰻(うなぎ)やブリの養殖が全国トップクラスの生産量を誇ります。特に近年は技術革新により、海外輸出も進んでいます。
3. 薩摩焼(陶磁器)
薩摩焼は江戸時代に島津藩が朝鮮から陶工を招いて始まりました。薩摩焼には「白薩摩」(高級品)と「黒薩摩」(日用品)の2種類があり、特に白薩摩は輸出品としてヨーロッパで高い評価を受けました。
4. 鉱業
鹿児島県には鉱業の歴史もあります。
• 硫黄採掘
硫黄は桜島や硫黄島などで採掘され、火薬や化学産業に利用されていました。特に薩摩藩時代には軍事目的で重要視されました。
• 金山・銀山
戦国時代から江戸時代にかけて、鹿児島県内の山地で金や銀の採掘が行われていました。
5. 薩摩藩の産業振興政策
江戸時代、島津氏が統治する薩摩藩は独自の産業政策を推進しました。
• 集成館事業
19世紀半ば、島津斉彬が主導した「集成館事業」は、日本初の近代産業化プロジェクトです。反射炉やガラス製造、船舶建造などが行われ、西洋技術の導入を積極的に進めました。
• 薩摩藩の輸出品
黒砂糖や薩摩焼が主要な輸出品として薩摩藩の財政を支えました。
6. 現代の産業
• 観光業
桜島や屋久島、指宿温泉などが観光地として国内外から人気を集めています。特に屋久島は世界自然遺産に登録されており、エコツーリズムが発展しています。
• 製造業
現代では食品加工業や機械製造業も重要です。黒酢や焼酎の製造が鹿児島を代表する産業として知られています。
火山を利用した地熱発電や、太陽光発電も進んでおり、持続可能なエネルギー分野での発展が期待されています。
鹿児島県の産業は、自然や歴史と密接に結びついており、地域の特性を活かした独自性が特徴です。また、近代化の歴史の中で先駆的な役割を果たしたことが、現在の産業基盤にも影響を与えています。